愛を知る小鳥
いつになく穏やかな表情で見つめられどこか落ち着かない感覚を覚えたが、あらためてこの人は本来こういう人なのだろうと感じていた。
初めて会ったときには何て嫌な奴だと思ったが、その後一緒に仕事をしていて不快に感じるようなことは一度もなかった。むしろいつも気づかないようにさりげなくフォローを入れてくれている。前に怪我した時だってそうだ。基本とても優しい人なのだろう。

仕事だっていつも真剣に取り組んでいる。それは今最も身近にいる自分が一番感じていることだ。何故彼が女性に人気があるのか、美羽にもなんとなくわかってきた。いつの間にか美羽は潤に対する上司としての信頼をもっていた。

これまで女性関係にだらしなかったようだが、今は自分にわかる範囲でそのような気配は微塵も感じられない。それでも諦めきれない女性が時折こうやって美羽を標的に攻撃をしてくるのだが…彼は一体どこまでそのことを知っているのだろうか。そもそも何故今ここに?

「いつまでそうやってるんだ。ほら、立つぞ」

座り込んだまま考え込む美羽へ潤が手を差し伸べる。

「あ、大丈夫です」

「いいから、ほら」

躊躇いつつ潤の手を取るとあっという間にその場に引き上げられた。

「あ、ありがとうございます」
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