愛を知る小鳥
き、距離が近い…

未だに手を握られたままじっとこちらを見る潤の視線にいたたまれなくなる。潤は潤でそんな美羽の様子をじっと観察していた。これまで何かの機会に彼女に触れることがあると激しく反応を示していた彼女だが、見る限り今はそのような様子はない。予測に反しての接触が苦手だということだろうか?

「あ、あの、専務、手を…」

「あ? あぁ、悪い」

思考を中断すると潤はその手を離し、手ぶらになった美羽の掌に眼鏡を乗せた。

「あ、ありがとうございます」

「ほんとに悪かったな。どこか壊れてないか」

「…いえ、大丈夫みたいです」

笑って答えると美羽はすぐに眼鏡を定位置へと戻した。

「眼鏡がないと別人みたいだな」

「えっ、そうですか?」

「あぁ」

どこがどう別人だと思われているのだろうと首をかしげる美羽の横で、潤はそのギャップに内心驚きを隠せないでいた。太めの茶色のフレームに隠れてよく見えなかったが、眼鏡を外した彼女の大きな黒い瞳はキラキラとして、思わず見てしまうほどだ。お固いスタイルで見落としがちだが、元来彼女の容姿は決して優れていないわけではない。以前あかねから彼女に好意を寄せる男も少なくないと聞いたことがあるが、控えめな性格に垣間見える彼女の容姿が彼らを惹きつけるのだろう。
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