愛を知る小鳥
「会食…ですか?」

朝の日課である挨拶と本日の業務報告を終えて専務室を出ようとしたところで潤に呼び止められた。

「あぁ。初めて出てもらったパーティで今井という男性に会ったのを覚えているか?」

「はい、今井商事の専務の方ですよね?」

「そうだ。彼から連絡があって今度食事でも一緒にどうかとの誘いがあったんだ。できれば君も参加して欲しいとね」

「私が…ですか?」

たった一度しか会ったことのない自分に何故声がかかるのか。驚くと同時に今は直接今井商事との取引もない時期だけに余計に理解できない。

「あの時も言ったと思うが彼は俺にとって親のような存在でね。仕事とは関係のないところでたまに酒を酌み交わすことがあるんだ。最近忙しくてずっとその機会もなかったんだが…久しぶりに声がかかったと思ったら君にご指名が入ったってわけだ」

「ですが…」

「あまり深く考える必要はない。彼は信頼に値する人物だし、きっとあの時直感で君を気に入ったんだろう。俺の身近にいる存在としてもう少し話がしてみたいと思ったんだろうな」

この3ヶ月仕事をしてきて潤が信頼に値する上司であることは充分に感じてきた。そしてその彼が信頼を置く相手ならば尚更そうなのであろう。

「…わかりました。私なんかで宜しければお願いしますとお伝え下さい」

「わかった。おそらく今週の金曜日になると思うからその心づもりでいてほしい」

「かしこまりました」
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