愛を知る小鳥
「ここだけの話、彼は若い頃から苦労しているんだ」
潤が出ていった方向を見ながら今井が口を開く。
「彼の家は医者の家系でね。父親は当然長男である彼に後を継がせる気でいた。しかし彼は自分は医者の器ではないと決して受け入れようとはしなかった。彼は何度も説得を試みたが聞く耳を持ってもらえず、結果的に家を出る形で一人で道を切り拓いていったんだ」
思いもしなかった彼の過去に美羽は真剣に耳を傾けていた。
「もともと頭の切れる子だったからね。特待生として大学で必死に勉強して、経済と経営に関するスキルを身につけていったんだ。彼に出会ったときはそんな時だったな。インターンでうちで働いていたんだよ。学生だったが社員に劣らないほどの能力をもっていた」
「そうなんですか…」
「私はそのままうちの会社に入らないかと勧めたんだ。でも彼は誰も知らないところで一人で頑張ってみたいとそれを受け入れなかった。そして今に至るわけだが、やはり若くてできると足を引っ張ろうとする連中というのはどこにでもいるものでね。私はいつでもうちに来てもらって構わないと言ったんだが…彼は一人でそれを乗り越えて見せた」
話を聞きながら何故人一倍警戒心の強い自分が潤に対して信頼をおけているのか、その理由が少し垣間見えたような気がした。彼はどこか自分と似ているところがあるのかもしれない、と。
「ただ女性関係だけは若い頃から落ち着かなくてね。誰に対しても真剣になれないというか。若い頃はそれでいいが、会社の上に立つ人間になった今、そういうことで足元を掬われるようなことになってほしくない。何よりも彼には幸せになってほしいと思ってるんだ」
あぁ、彼が今井さんが親のような存在だと言っていたけれど、本当にその通りだ。血の繋がりはなくとも、二人は固い絆で結ばれている。苦労しながらもそんなかけがえのない存在に出会えることを羨ましくも思った。
潤が出ていった方向を見ながら今井が口を開く。
「彼の家は医者の家系でね。父親は当然長男である彼に後を継がせる気でいた。しかし彼は自分は医者の器ではないと決して受け入れようとはしなかった。彼は何度も説得を試みたが聞く耳を持ってもらえず、結果的に家を出る形で一人で道を切り拓いていったんだ」
思いもしなかった彼の過去に美羽は真剣に耳を傾けていた。
「もともと頭の切れる子だったからね。特待生として大学で必死に勉強して、経済と経営に関するスキルを身につけていったんだ。彼に出会ったときはそんな時だったな。インターンでうちで働いていたんだよ。学生だったが社員に劣らないほどの能力をもっていた」
「そうなんですか…」
「私はそのままうちの会社に入らないかと勧めたんだ。でも彼は誰も知らないところで一人で頑張ってみたいとそれを受け入れなかった。そして今に至るわけだが、やはり若くてできると足を引っ張ろうとする連中というのはどこにでもいるものでね。私はいつでもうちに来てもらって構わないと言ったんだが…彼は一人でそれを乗り越えて見せた」
話を聞きながら何故人一倍警戒心の強い自分が潤に対して信頼をおけているのか、その理由が少し垣間見えたような気がした。彼はどこか自分と似ているところがあるのかもしれない、と。
「ただ女性関係だけは若い頃から落ち着かなくてね。誰に対しても真剣になれないというか。若い頃はそれでいいが、会社の上に立つ人間になった今、そういうことで足元を掬われるようなことになってほしくない。何よりも彼には幸せになってほしいと思ってるんだ」
あぁ、彼が今井さんが親のような存在だと言っていたけれど、本当にその通りだ。血の繋がりはなくとも、二人は固い絆で結ばれている。苦労しながらもそんなかけがえのない存在に出会えることを羨ましくも思った。