愛を知る小鳥
「もし私が少しでも専務のお力添えができているのならとても光栄なことだと思いますし、これからも精一杯専務の支えになれたらと思っています」

力強く答える美羽の姿に頼もしさを感じ、今井は満足そうに頷いた。美羽は小柄で控えめな容姿をしているが、内に秘めたエネルギーのようなものを感じる。そして眼鏡の奥から見える瞳には一点の曇りもなく、これまで潤の周りにいた女性達の誰とも違うと確信をもっていた。

「私としては公私ともに彼の支えになってもらえたらと願っているのだけどね」

「え?」

今井の放った言葉の意味が一瞬わからず、言われた言葉を頭の中で繰り返す。そしてその意味するところがわかった時、美羽の顔は驚愕に包まれた。今井はニッコリと穏やかな表情で美羽を見つめている。何か言葉を返さなければと思いつつ何を言っていいかわからず戸惑っていると、入り口の扉が開いた。

「すみません、お待たせしました」

「もう大丈夫なのかい?」

「はい。確認したいことがあっただけでしたので。…どうかしたんですか?」

潤は心なしか落ち着かない美羽の様子に気づく。

「いや? 二人で色々と楽しい話をしていたんだよ。ね、香月さん」

「は、はい。色々と勉強させていただいてました」

今井はニコニコ顔だが、やはり美羽はどこか焦っている様に見える。とはいえ決して雰囲気が悪いということではなく、むしろどこか砕けたようにさえ思えたので、潤はそれ以上深く考えないことにした。

それからまた和やかな時間を過ごし、それなりに長い時間が経ってから会食は終わりを迎えた。

「香月さん、今日は本当にありがとう」

「いえ、こちらこそ声をおかけいただいて光栄でした。とても楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます」

「さっきも言ったけど、彼のことを宜しく頼みます」

「はい。私にできることであれば精一杯」

うんうんと頷くと今井はにこやかに帰って行った。
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