愛を知る小鳥
悲痛なほどの悲鳴を上げながら美羽は全身を使って暴れ回る。何とかそれを落ち着かせようとするが、取り付く島もないほど激しく抵抗する。普段控えめな彼女のどこにこれだけの力が秘められていたのだろうかと思うほど、彼女の動きは止まらない。それと同時に呼吸は激しく乱れ、このままでは危険だと感じた潤はとにかく彼女を正気に戻さなければと焦る。

「香月っ! 俺だ! とにかく一度落ち着け!」

「いやっはなしてっ!! はなしてぇっ!!!」

「_____っ、美羽っ!!」

潤は美羽の頬を両手で挟み、動きを防いで彼女の名前を声の限り叫んだ。その瞬間、美羽の体から力が抜けるのを感じた。

「落ち着け、俺だ。わかるか?」

「せ…せん、む…?」

震える声で美羽が呟く。体はガクガクと震え、今にも足元から崩れ落ちそうになっている。潤はその体を自分に引き寄せるようにして支えると、静かな声で囁いた。

「そうだ、俺だ。大丈夫だ。何もしないし何も起こらない。大丈夫だ」

震えの止まらない体を落ち着かせるように背中を摩り、ただひたすら大丈夫だと言い続けた。それからどれくらいそうしていただろうか。ほんの少しだけ美羽の呼吸が落ち着いてきた頃、室内に光が灯った。それと同時に止まっていたエレベーターが動き出す。

「復旧したみたいだな…」

ホッとしながら美羽を覗き込むと、顔はまるで紙のように青白く、涙でぐちゃぐちゃになっていた。未だに震えは止まらない。普段冷静沈着な彼女が見せるあまりにも痛々しいその姿に胸が締め付けられるように苦しくなり、その小さな体をきつく抱きしめた。


そうしてエレベーターが1階につく頃には美羽は意識を失っていた______
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