愛を知る小鳥



いつの間にか外は雨が降っていた。
夜の闇に同化するようにザーザーとその存在を主張している。
まるで彼女の悲しみに共鳴しているかのように…






潤は雪のように真っ白な美羽の横顔を見ていた。彼女は静かに眠っている。

あれから気を失った美羽を抱えてエレベーターを出ると、ホテルのスタッフが待ち構えていた。不手際を謝罪するためだろう。しかしぐったりと抱えられた美羽を見て青ざめ、ひたすら謝罪しながら救急車を手配することを打診された。はじめは潤もその方がいいと思っていた。だが彼女のためにそれは避けてあげた方がよいと、己の第六感が警鐘を鳴らした。それならばせめて部屋を用意するという従業員に断りを入れ、とにかくあの場を離れることが一番いいと判断した。

考えた結果、自分のマンションに連れてくることにした。とてもではないが今の状態の彼女を一人にしておくことはできない。移動中も部屋に入ってからも美羽は一度も目を覚ますことはなく、ずっと眠っていた。ベッドに寝かせる頃には荒れていた呼吸も落ち着きを取り戻しているようだった。

それからずっと、潤は彼女の様子を見守り続けている。
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