愛を知る小鳥
ひたすら眠り続ける美羽を見つめながら、潤はこれまでのことを思い返していた。

不意打ちでの接触に異常なまでの反応を示していたこと。
女性であることを意識させないようなスタイルにこだわっていたこと。
異性からのアプローチに全く関心を示さないこと。
そもそも人と深く関わろうとしていなかったこと。
そして…今日の激しく取り乱した様子。

それらのことから導き出されるとある可能性が頭を掠めたとき、潤は頭を抱えて項垂れた。
まさかそんな…だがあまりにも思い当たる節が多すぎる。
暗闇に対する恐怖でパニックを起こしたのなら、見知った自分が傍にいることは彼女にとって本来安心材料になるはずだ。だが彼女は完全に拒絶していた。傍にいるのが誰かもわかっていないようだった。ようやく自分の存在に気づいた時に初めてほんの少し正気を取り戻しているように見えた。

真実を聞いたわけじゃない。だから決めつけることはできない。
だが…何かしら彼女がそういうことで大きな傷を背負っていることは間違いのないことだろう。彼女をベッドに寝かせる際に外して初めて気づいたが、彼女の眼鏡に度は入っていなかった。つまりはダテだ。あれも彼女の鎧の一つだったに違いない。


なんてことだ…


頭を抱えた拳がギリギリと震える。行き場のないこの怒りをどこにぶつければいいのか。言い知れぬ激情と悲しみが潤を支配していた。


静かな室内に雨音だけがもの悲しげに響いていた____
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