愛を知る小鳥
そうして涙も涸れてしまうのではないかと思うほど泣いた頃、ようやく落ち着きを取り戻してきた美羽はなんだか急に自分のしたことが恥ずかしくなってしまった。

「落ち着いたか?」

自分を包み込む胸元から優しく響く声。いつの間にか彼の洋服にしがみついていたらしく、慌ててその身を剥がした。

「す、すびばせん…」

泣きすぎてまともに話すことすらできない。目の前を見ると潤の洋服が涙でびっしょりと濡れてしまっていた。

「服が…」

「あぁ、別に何の問題もない」

申し訳なさそうに眉を下げる美羽に潤は全く気にするそぶりも見せない。

「な、何から何まで本当に…」

「ごめんなさいならいらないぞ?」

「…え?」

「って、ハハ、ひどい顔だな」

顔を上げた美羽を見た瞬間、堪えきれずにプッと吹きだした。顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて、鼻は真っ赤に染まりところどころ髪が貼りついている。潤が手を伸ばして貼りついた髪を綺麗に整えると、美羽は自分の姿を想像して、そして潤のその動作に恥ずかしくなり、今度は鼻だけでなく全身を真っ赤に染めた。

「はは、今度は茹でダコになってるぞ」

「ゆっ…!」

美羽は慌てて両手を頬に添えると、あまりの恥ずかしさに身悶えた。

「でもそういうお前の方がいいよ」

「…え?」

「普段のお前も悪くないけど、そうやって感情を解放してる姿はもっといい。お前は色々と我慢しすぎなんだよ。もっと自分を甘やかしてやれ」

「専務…」

その言葉にまた涙腺が緩んでくる。美羽は慌てて下を向くと歯を食いしばりグッと涙を堪えた。

「しばらくして落ち着いたら送っていくから」

「…はい。本当にすみま…ありがとうございます」

潤は顔を上げて泣き笑いの顔をした美羽を見て微笑むと、ポンポンとその頭に手を置いた。
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