愛を知る小鳥
「なっ、何の話ですかっ?!」

「決まってるじゃない。美羽ちゃんと専務はどこまでいってるの? って話よ」

慌てふためく美羽をよそに、あかねはこともなげに言う。

「私と専務はそういうのじゃないですから!」

「えっ、まだ何にもないの? ちょっと意外だわ、あの専務が」

顎に手をあててぶつぶつと呟く。

「いえ、だからそもそも専務が私に対してどうこうってことがまずあり得ないですし、それに私も…」

「何言ってるの!」

ガタンと大きな音を立てて体を乗り出すと、あかねはズイっと美羽の目の前まで美しい顔を寄せて断言した。

「専務が美羽ちゃんに好意を持ってるのは間違いないわ」

「そんな馬鹿な…仮にそう見えるのだとしたら上司としての愛情だと思います」

「いーえ! そうじゃない。私ねぇ、彼が専務になる前も含めてもう5年は一緒に仕事してるんだけど、美羽ちゃんと一緒にいるときの雰囲気はこれまでの誰とも違うのよ」

再び椅子に腰掛けるとさっきまでの陽気な雰囲気とはまた変わり、何か考えるように話し始める。

「それは…多分私が今まで周りにいた女性とはあまりにもタイプが違うからで…」

「そう、それも原因かななんて最初は考えたのよ。でもねぇ、それだけじゃないの。ん~、美羽ちゃんはまだ専務との付き合いが短いからピンと来ないんだろうけど、ある程度彼を知ってる人なら私の言うことがわかると思うのよねぇ…」

そんなこと言われても。それはあくまでも彼女の主観であって専務の考えでも何でもない。それに、万が一にもそんなことがあるのだとしても、だからといって何も変わることはないのだ。
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