キミと見た景色をもう一度
これ以上虚しい思いをしたくなかったから、静かに本を閉じた。
「この本、元の場所に戻してくるね」
「あ、うん・・・」
席を立ちもう一度奥の部屋に向かった。
こんな本に出会わなければ良かった。
そしたら、走りたいなんて心の奥にしまいこんでいた思いを
忘れたままでいられたのに。
走りたいなんて・・・。
今の私には自殺行為。
「でも、一度でいいから走りたい・・・」
小さく呟いた声は、誰もいない空間に消えてなくなった。