だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
ピンポーン。
午後九時を少しだけ過ぎた頃、家のインターホンが鳴った。
夜ご飯を食べて少しうとうとしてしまったらしく、パジャマ姿のままだった。
慌ててインターホンを取るとカメラに水鳥さんが映し出されて、オートロックを解除した。
水鳥さんなら、パジャマ姿でも許してくれるだろうと思ってそのまま部屋の中で待っていた。
玄関のインターホンが鳴って、鍵を開けに行く。
本当に身体が軽くなったな、と思う。
部屋のドアを開けると、買い物袋を提げた水鳥さんが立っていた。
「少しは体調、良くなった?」
心配そうに私の顔を見ていた水鳥さんに笑顔を返し、部屋の中へ案内した。
さっきまでずっと寝ていたので、とりあえず見える所だけは片付けておいた。
リビングしか片付けていないので、寝室は色々なものでごちゃごちゃしたままだけれど。
1LDK・十一畳のリビングダイニングに置かれたソファーに、水鳥さんを案内する。
と言っても、水鳥さんは何度かうちに来たことがあるのだ。
勝手知ったるなんとやら。
そのままキッチンの方へ行って、食材などを片付けてくれた。
「とりあえず、水分補給できるものと果物持ってきたから、明日も休みなさい」
「体調も大分いいので、明日は出勤しようと思ってたんですけど・・・」
台所から掛けられた言葉に、小さな声で答えた。
水鳥さんの言うとおり、明日一日休んだ方がいいのはわかっている。
けれど、仕事を任せっきりにするのが嫌で。
すると、水鳥さんはにっこり笑って私の方を向いた。