だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
「なんだか、気を遣わせてしまってすみません」
「いいのよ。私だったら、シグでも家に上げられないわ」
「そんなことないですよ。水鳥さんなら、どんな格好しててもお綺麗ですよ」
「あら、ありがと」
社交辞令ととらえたのか、簡単に流されてしまった。
本気でそう思ったのになぁ、と思いつつ、これ以上は失礼に当たるかなと思って言葉にしなかった。
「そういえば、今日中に提出するデータの件、ありがとうございました」
「いいのよ。体調悪いのに、結局仕事のことばかり考えてたんじゃ休めなかったんじゃない?」
「いいえ、そんなことはなくて。しっかり休ませて頂きました」
「それならいいけど」
そんな他愛もない会話の後、仕事の状況や社内の様子を聞いたり、チームの様子を話してくれた。
大体の状況はわかっても会社に行かないことには、結局のところ何もわからないのと一緒だ。
体調をしっかり戻すことを最優先に考えて、今は休養しようと思った。
あまり長居をすると無理をさせてしまうから、と言って水鳥さんは一時間程度で帰っていった。
引き止めて風邪をうつしてしまっては大変なので、お礼を言ってお見送りした。