だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
空気の入れ替えが済んだ部屋の中は、さっきよりも気分がいい。
あまり体を冷やすのも良くないと思い、静かに窓を閉めた。
雨の気配が部屋の中に少しだけ残っているけれど、すぐにいなくなってしまうだろう。
リビングに残されていた二つのカップを洗うために、両手に持ってキッチンに向かう。
紅茶とココアの匂いのするカップを綺麗に洗っていく。
仕事に戻ったらまた慌しい日々が始まる。
一週間後にはブライダルフェアがある。
きっと今はチームのみんなが、各々の仕事の合間に準備を進めているだろう。
その前に少し、ゆっくり休みを貰えたことは良かったのかもしれない。
意識をしっかり現実に戻すために、休む前に持ってきた資料を見直そう。
そして明日、会社に電話をしよう。
家で出来ることをして、明後日には仕事に追いつける頭にしておかなくてはいけない。
台所を綺麗に片付けて、早めにベッドに潜り込む。
今年は、紅雨を見ることが出来なかった。
薄紅色の景色を想い出して、少し胸が苦しくなるけれど。
静かな雨の音を聴いて、目を閉じた。