だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
準備期間は一年間。
来年のジューンブライドフェアに向けて、一年かけて構想を練っていく。
今年の開催は、オフィシャルパ―トナーとして共同運営が決まっている。
と言っても、企画はもう既に出来上がっているので、簡単に言えば『当日のお手伝い』なのだ。
有名メーカー創業六十周年の一大プロジェクト。
もちろん、大手広告代理店とタッグを組んで。
なんでも、尾上部長の友人が大手広告代理店のプロジェクトリーダーだとか。
尾上部長は、一体どれだけの人なのだろう。
先方が『どうしても』という鶴の一声で、中小企業のうちが抜擢されたらしい。
確かに中小企業ではあるけれど、うちの会社の評判はかなりいい。
それもこれも、
尾上部長、
櫻井リーダー、
南係長、
の三人が関わったプロジェクトが、次々に高い評価を得ているおかげ。
凄いなぁ、と感心してる場合じゃないんだろうけど。
どこか離れたところに自分の気持ちがあるようで。
達成感や向上心という『現実味』が、私には欠けているようだった。
今年の六月で主任になることが決まっている。
私の役割も増えてくるだろう。
大切な場面に立つことが、きっと増えてくる。
ワーカホリックな私にとっては、これ以上嬉しいことなんてない、ハズなのに。
長く勤めるのも悪くない、と思っているのに。
日差しが差し込むミーティングルームで必死の話し合いをしながら、そんなことを考えていた。