だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
緑雨
多忙...タボウ
動き出したプロジェクトのおかげで、連日終電での帰宅が続いていた。
ブライダルフェアの原案は出来上がっているので、配置などの当日分担を決める。
企画営業部は営業部長と自由に動ける男性四名の営業で、少数精鋭なのだ。
うち三名育成を一手に引き受けるのが櫻井さんだ。
内容がウェディングということもあり、女性社員に色々な調査を行う。
女子だけのランチにうちの営業が混ざっている、ハーレムランチが代表的だ。
貴重な意見交換は、社内の女子の楽しみのようになっていた。
もちろん、それだけではなく。
櫻井さんや他のメンバーとの『繋がり作り』にも彼女たちは余念がないけれど。
うちの営業達は、それはそれは素敵なホスト役でしょうから。
どれもこれも。
外ヅラの厚いヤツばかりなのに、それを見抜く女子は少ないようだった。
そんな報告を上げると、尾上部長は笑っていた。
その隣で、部長のプレゼン資料を用意する水鳥さんまで一緒に、だ。
「そんなに笑うことないじゃないですか」
「いや、アイツらの外ヅラに気付くのは水鳥嬢と山本くらいだろうな、と思って」
「そうねぇ。うちの子達、見栄っ張りばかりだもの」
「それにしたって。女子会によく混ざってられますよねぇ。仕事バカっていうか、なんていうか」
「違いないな」
そんなことを言う間にも、部長と水鳥さんの手が止まることはない。
この二人に任せておけば、ほとんど仕事が終わってしまうんじゃないか、という速さで。
そんな二人を見て、あなた達も十分仕事バカです、と心の中で呟いた。