だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版





共同運営と言いながらも、優劣はもちろんある。

共同運営を提案されたのはうちの会社なので、おのずと先方を立てた運営になる。

それも一つの『提携』のカタチなのかもしれない。


提携している担当企業との相互間の意見交換も大切な仕事の一つになる。

食い違ってしまえば、内容が空中分解してしまう。

お互いの意見の一致と協力体制が何よりも大切。

それが『提携』という現場。


そういう中間現場にいると、櫻井さんの凄さが良くわかる。


相手の意見を鵜呑みにしないけれど、先方の意見をうまく取り入れ何の問題もない中間案を組み立てる。

・・・ように見せて、実は。

うちが推し進めていきたい一番大事な部分は、しっかりと守り抜くのだ。




「櫻井さんには敵わないですね」


「いえいえ。元々そちらで作成して頂いた原案があったからこそ、双方が納得出来るものになったんじゃないですか」


「確かに、こちらにデメリットもないですし・・・」


「ありがとうございます。それでは、こちらの提案は以上です。変更点に関しては、後日こちらから書面にて連絡させて頂きます」




強引な訳ではない。

けれど、芯を残しながら筋を通し意見を盛り込んでいく。



この人は、人当たりが良いのをイイコトにこの技を身に付けたのかな、と邪推したけれど。

並大抵の努力では、この情報量と提案力を身に付けることが出来ないのを、今は知っている。



本当に、お見事。

見習うべきところは沢山ある。

盗むべきところも山ほどある。


まだここで仕事をしていく意味がある。




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