だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
連れて来てくれたのは、全面ガラス張りの小さなカフェだった。
こういう『女子』の好きそうなお店をよく知っている。
ハーレムランチだって、ほとんどが櫻井さんチョイスなのだ。
実は水鳥さん情報だ、ということを、ほとんどの人は知らないだろうけど。
そうして教えてもらった後、櫻井さんは必ず自分で足を運ぶ、ということを決めている。
行ってみて、味はもちろん、対応の良いところしか選ばないのだ。
本当に、細かいところまで気を使ってるのがよくわかる。
そこまでしなくてもいいのに、と少し前を歩く櫻井さんを見て思う。
お店に入ると、窓際の陽当たりのいい席に案内された。
本当に天気がいい。
その席も、眩しいくらいに日差しが差し込んでいた。
眩しい窓の外を見つめる。
目の前で櫻井さんがこちらを見ている気配がした。
顔を上げて視線の気配を辿ると、櫻井さんはじっと私の顔を見つめていた。
息が詰まりそうな真剣な顔で。
「どうかしましたか?」
不思議に思って尋ねると、ふいと目を逸らされてしまった。
いつもは、こんなにあからさまに目を逸らすような人じゃないのに。
不思議に思いながらも、今度は私が櫻井さんを見つめていた。