だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
甘雨
憂慮...ユウリョ
「山本、水鳥嬢知らないか?」
「水鳥さんですか?さっき受付に行ったので、来客応対に行ってると思いますが探してきましょうか?」
「あぁ、それならいい。前年データの検索頼んでただけだから。」
「わかりました」
打ち合わせの議事録を作成するためパソコンに向かっていると、少し心配そうな声をした尾上部長に声をかけられた。
水鳥さんは部長のサポート役の他にも多くの仕事をこなしている。
それは多分、普通の人では音をあげてしまいそうな量の仕事で、仕事が早い水鳥さん以外がこなせる量ではないと思う。
事実、自分にあの量の仕事が回ってきたらこなせる自信などない。
むしろ、逃げ出すか周りに頼み込んででもやらないと、期日に間に合わせる事さえ危ういのでは、という量なのだ。
いつみても隙がなく、大人の余裕を持っている水鳥さん。
ただ、たまに給湯室に入り浸ることがある。
そういう時の水鳥さんは、かなりに詰まっている時だ。
長く席をはずす人ではないので、たまに姿が見あたらないと部長は水鳥さんの居場所を確認する。
たまにこういうやり取りがあると、部長はとても水鳥さんを大切にしているのでは?と、つい聞きたくなってしまうのだけれど。
簡単に踏み込んでいい領域でないことくらい、心得ていた。