だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
仕事が出来る人たちは、自分の仕事以外にも周りを見渡すことが要求される。
部長はさりげない様子でいつもチームメンバーを気遣っている。
忙しくなって余裕がない時にこそ、部長はメンバーに声をかけたりしていた。
場を和ますための笑えないオヤジギャグはどうかと思うけれど、それも愛嬌なのかもしれない。
まだ若いのに・・・。
議事録処理が終わり、それを保存する頃に水鳥さんは戻ってきた。
いつもより少し顔に疲れが滲んでいるように見える。
憂いを帯びたような表情は水鳥さんをより艶っぽくさせているようにも感じ、それでいてとても心配になる表情だった。
「水鳥さん大丈夫ですか?顔色、あまり良くないですけど」
「平気よ。ちょっと身体冷えたのかもしれないわね。何か飲むわ」
さらりと言ってのける水鳥さんの表情は、いつもと変わらない。
さっきのは見間違いかと思うほど、いつも通りの顔をしていた。
気のせいだったのかしら、と思いながら水鳥さんの横顔を盗み見ていた。