だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版





「なぁに、シグ?私の顔に何かついてるの?」




私を見つめて嬉しそうに笑う水鳥さんと目が合って、私は真っ赤に赤面してしまった。

じっと見つめていたことが恥ずかしくて、綺麗な水鳥さんの顔を見ていられず俯いた。

きっと今の私は、男性社員ばりの熱視線を送っていたのだろう。




「水鳥さんがいつもと少し違うな、と思っていたので。なんだか、すみません・・・」


「あら、いつもとそんなに違う?些細な変化でもあったのかしら。それとも、それに気付くほど気にしてくれているとか?」


「いや、そんないつも見つめているわけじゃ・・・」


「本当に可愛いわね、シグは」




私を覗き込むように水鳥さんは顔を寄せて微笑んだ。

なんだか小さい子をあやすようなしぐさに、少しだけふてくされた気持ちになる。



間近にこんな綺麗な顔があることを、男性社員はとても羨ましがることだろう。

男性社員にこんな顔をすれば、きっと。

どんな人でも水鳥さんにトキメクに違いなかった。




「その顔は狡いです、水鳥さん」


「そう?シグにしかしてあげないわ」


「・・・私、口説かれてます?」


「そうね。シグが男の子だったら、私の方が心底好きになってしまいそうだわ」




喜んでいいのか、悲しんでいいのか。

けれど、水鳥さんは確実褒め言葉としてその言葉を発したのだろうから、小さく『どうも』と答えておいた。




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