だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版





私は必死で堪えていた。

ここでいつもの様に大声を張り上げたら、また社内中から笑われるに決まっている。

限界まで耐えてやる、と心に誓って握っている拳に力を込めた。




大げさにお腹を抱えて笑っている松山と、必死に笑いを堪える篠木。


苦しいと言わんばかりにヒィヒィ言っている松山の頭をバコッと叩く。

笑い過ぎなのよ、馬鹿。



大きな声にならないように注意深く声を出すけれど、もう限界ギリギリなので調整できる自信はない。

それでも何か言わないと収まらない私は、慎重に声を絞り出した。

可能な限り静かに。




「・・・松山、笑いすぎ。罰として私に牛乳買ってきなさい!!1リットルパックだよ!!!」




結局抑えられなかった声はオフィスに響いてしまった。

他部署からもくすくす笑いが聞こえてくる。



あちゃー。

まぁ、今更笑われても何とも思わないけどね。

ちょっとは恥ずかしいけどね。



松山は、若者らしいツンツンした頭を大げさに抱えて私の方を見上げる。




松山優哉
(マツヤマユウヤ)。

入社二年目。

去年の新卒入社。



子犬のように人懐こい顔立ちをしていて、新入社員の中ではダントツに元気がいい。

天真爛漫という言葉がぴったりの男の子。


元気がない、と言われがちなゆとり世代の入社で心配をしていたけれど、従順な性格と持ち前の明るさで、うちの部署にすっかり馴染んでいる。

新入社員には大変な仕事もしっかりこなしてくれている。




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