だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
罰...バツ
打ち合わせに入った二人のために、給湯室へ向かう。
仕事は山積みで終電間際まで働いているというのに、あまりストレスが溜まっていないことに気が付く。
それは、社内で当り散らしているからなのかもしれない。
発散する場所が少しでもあるということ。
そのことは、私にとってはすごく有り難いことなのだと思った。
さっきまでのやり取りを思い出すと恥ずかしいことばかりで赤面するけれど、くすくすと笑いがこみ上げてくるのも確かだった。
自分用のココアを取り出してお砂糖を足す。
お湯でココアを溶かしてから牛乳を加え、電子レンジに入れて温まるまでじっと待つ。
給湯室が少しだけココアの匂いに満たされた頃、誰かが来る気配がした。
「疲れた。時雨、俺にもココアわけてくれ」
「いいよ。森川も甘めでいんでしょ?」
うん、と頷いて森川は大きく伸びをする。
森川は百八十センチを超える長身なので、給湯室で伸びをするとなんだか狭そうだ。
先にレンジで出来あがった自分のココアを森川に渡す。
森川がじっとそのマグカップを見て受け取らないので、もう一度ぐっと差し出す。
「大量の資料まとめて、プレゼンに行くんでしょ?来年のことばかりが仕事じゃないから、煮詰まってるんじゃない?」
ブライダルフェアは大きなプロジェクトではあるが、今中心で動いているのは櫻井さんと私だけだ。
その他にも仕事は山のように舞い込んで来る。
嬉しい悲鳴だけれど、仕事量に大して人数が足りないのも事実だ。