だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
私の返事も聞かずに、森川は給湯室から出て行ってしまった。
オフィスで別にいいよ、というのは簡単だけれど、周りに何か突っ込まれて墓穴を掘りそうなので下手なことは言えない。
森川なりに気を遣ってくれたのかも、と思って無碍にするのも気が引けた。
こういうことは初めてではないし。
月に一回くらい、森川とはご飯を食べに行く。
同期で同じ部署なのは森川だけだ。
すぐ近くの席に座っているので、煮詰まっている私を連れ出してくれているのだろう。
二人で散々愚痴って。
それなのに、結局仕事の話になってその場で企画をまとめてみたり、とか。
無言で向き合ってご飯を食べていたこともあった。
普通なら気まずくなりそうなものだけれど、森川とご飯を食べに行って『気まずい』なんて思ったことはない。
意見がぶつかって、解散することはあったとしても、だ。
今日はきっと、森川の方が煮詰まっているように思う。
本当は森川が飲みに行きたかったのかもしれない。
特に用事もないし、付き合ってやるか。
八時までに今ある仕事をまとめてしまわなくてはいけないので、早速仕事に戻ることにした。
私はきっと丁度いいくらいに終われると思うけれど、森川は明日に沢山残してしまうんじゃないかと思う。
少し急いで自分の業務を終わらせて、森川を手伝ってあげようと思って気合を入れた。
豪勢な晩酌のために。