だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
「じゃあ、お先にあがりまーっす!お疲れ様でした!!」
大きな声でオフィスを後にする。
チームの面々は営業から直帰だったり、まだパソコン画面と睨めっこしていたりする。
久しぶりに早い時間に仕事を終えたので、体が軽い。
足早にオフィスを後にする。
「しぐれっ!!」
「どうしたんですか?何かトラブルでもありましたか?」
大きな声がして振り向くと、そこには櫻井さんがいた。
帰り際に何かあるなんていつものことだ。
早めに対応して処理できるなら、今すぐやってしまいたいと思う。
そんな私の発言と顔を見て、櫻井さんはプッと吹き出す。
さも楽しそうに私の顔をまじまじと見つめている。
「お前の頭の中は仕事一色か?久しぶりに早く上がれそうだし、ゆっくり飯でも行こうかと思ってさ」
仕事の話じゃなくて、正直ホッとした。
でも、そのお誘いも今日はちょっと気まずい。
別に断ったところで何にも言われないのはわかっているけれど、明日拗ねたフリしてからかわれそうだなぁ、と考えていた。
「すみません。今日は先約があって・・・」
何でもないように櫻井さんに告げる。
先約が森川であることは言わないでおいた。
「そっかぁ。森川に負けるとは思わなかったな。同期ってずるいよな、そういうところ」
「・・・なっ!知ってて声かけたんですか?」
「知ってたわけじゃねぇよ。カマかけたら、勝手にしぐれがバラしたんだろ?」
「なんでそんなこと・・・」
「どっちを選ぶのかな、と思って」
「はい?」