だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版





何で櫻井さんが社内であんなにも人気なのか、私には彼の魅力がさっぱりわからない。

物凄く子供っぽいことをして、人をからかうのが趣味のくせに。

時々驚く程鋭い指摘をしてくるその真面目さは、確かに目を見張るものがある。




モテるだろうに、派手に遊んでいる感じはない。

ガードの固さは、ギャップがあってイイと思うけれど。



・・・『イイ』って!!!



何考えているんだろう、と思って頭を振る。

余計なことは考えずに、お酒で流し込みたいと思った。




なんだかまだ人の気配がするような気がしてちらりと後ろを振り向いた。

水鳥さんと櫻井さんが並んで話をしているのが見えたが、とりあえず待ち合わせの場所に向かった。






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時雨の後姿を見送っていると、聞きなれたヒールの音がした。

嫌なとこ、見られたな。




「あら、フラれちゃったのね」


「やめてくださいよ。そんなんじゃないですから」


「素直じゃないこと。いつまでもソレじゃ、嫌われるわよ?」


「・・・たまんないですね。他の男を選ばれる、とか」


「・・・仕方ないわね。飲むわよ。付き合ってあげるから」


「ありがとうございます、水鳥さん」


「どういたしまして。変わらないわね・・・櫻井君は」




貴女も、と思って力なく笑った。


この先輩は昔からそうだ。

察しが良すぎて、弱ってる俺をいつも見つけてくれて。


だからいつも、甘えてしまう。






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