だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
「社会の中に自分の居場所があるのに、いつ居なくなっても大丈夫って言われてる気がするの」
上手く言えない。
こんな風に弱音を吐きたいわけではない。
言葉が詰まる。
「全部が中途半端で、不安、かな」
必要とされているのに、いなくても大丈夫と言われているような感覚。
矛盾したこの二つの事が交わることはない。
上手く整理出来れば、こんなに考えることもないと思うのだけれど、今はそれが出来ていない。
中途半端なんだ、と小さく呟いて水割りをぐいっと煽る。
空気と一緒に飲み込んだので、ごくりと喉が鳴った。
森川の目線は、私の方を向いたままだ。
真剣な眼差しを今は直視出来ずにいるので、なんだかいつもよりも距離を感じるようだった。
森川が持っていた水割りを飲み干して、氷がカランとなる音がした。
自分で焼酎を注いでいるので、グラスを受け取り氷と水を入れる。
それを混ぜて、森川に手渡した。
森川はまた一口焼酎を飲み込んで、こちらに向き直った。
真っ直ぐに私の方を見て。
「少なくともチームのみんなはお前がいないと困る。うちのチームの大事な骨組みだ」
真剣な目線と、誠実な声がする。
この真面目な同期が、私のためだけに伝えてくれた言葉。
私に届けてくれた、言葉。