だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
「・・・っ、おはようございます!」
私の声は大きい。
それこそ、オフィス中に届いてしまうくらい。
少し恥ずかしい気もするけれど、しかたない、と思うことにしている。
挨拶をするのが、とても好きだから。
「山本っ!今日も男前だな!もうすぐミーティング始まるから用意しとけ」
声をかけてきたのはうちの部署の部長。
尾上和久
(オノウエカズヒサ)。
来年四十歳。
社内でも評判のイケメン部長は、その若さゆえスピード出世まっしぐら。
何がすごいって、仕事が早い。
私が一を伝える間に先読みして五までわかってしまうほど。
この人の下で働けるのは、私にとってとても喜ばしいこと。
ただ、この人。
結婚している、ということだけど、どうも家庭を持っているイメージがない。
けれど、休日の度に子供や奥さんと一緒の所を目撃されている。
私も何度か見たことがあるけれど、ちょっとした違和感は否めなかった。
思い過ごしかな?とも想うけど。