蒼夏の刹那



「あのっ……!」



私の声になぎくんが足を止め、振り返る。



「藍花?」

「と、突然呼び止めてごめんなさい。でもね……私、まだなぎくんに何も伝えてないから……伝える資格なんてないのもわかってる……だけど!」



私はそこまで言って、思わず泣きそうになる。



その時、幻覚かもしれない。



優しい蒼い風が頬を撫でていった。



幻覚でも嬉しかった。蒼が、私の言葉に応えてくれたような気がして。



最後まで、弱い私でごめんなさい。



なぎくんは何も言わない。



「あなたが、好きです!大好きです……これからも、あなたと一緒にいたい……いたいよ」



後半自分の想いが零れてしまった。



心臓が壊れてしまいそう……あの時の蒼も、こんな感じだったのかな。



なぎくん……何も言ってくれない。



やっぱり、都合いいよね……なぎくんを散々傷つけて、今さらこんな事言ったって仕方ないのにね……



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