蒼夏の刹那
いつもより遠回りして目的地に行くと、蒼は葉桜を眺め速水くんは読書をしていた。



……もう来てたんだ、いつから待ってたんだろう?



そんな事を思った時、速水くんが文庫本から顔を上げる。



「気にするな。約束の時間よりちょっと早く着いた、だけだ」

「そうなんだ……速水くん、重そうな荷物だね」



手提げから覗かせたのは、量は少ないけど厚みのある本が数冊。



文庫本は自分のを持参したのかもしれない。



「まあ。……本、好きだし」

「速水くんは推理もの好きだよね」



そう微笑むと速水くんも微笑み返す。



思い出せてよかったと、強く思う。速水くんの記憶も、笑顔も、私の大事なたからもの。



< 45 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop