蒼夏の刹那
次に目が覚めたら終点だった。空は明るみ、まるで大空のような、海が目の前に広がっていた。



どこでも続き、どこまでも行けそうな。



「蒼……!みてみて海だよっ」

「ホンマか!?」



海、という単語を聞いた蒼はガバッと起きて、窓の方へ飛んでいき張りつく。



「すごいなあ〜」



あ……葉桜を見ている時の蒼だ。



私は海を見てはしゃぐ蒼に、不思議に思い聞いてみる。



「あの……蒼も、海はじめてなの?」

「まあな。……藍花が前、人魚姫の話読んでた時に一度連れてってやりたい思うてて……おれが叶えたるって、約束したやん」

「……ありがとう、蒼。すごくすごく、嬉しいよ――」



バスが止まるまで、私と蒼は窓から見る海をまるで子供のように、夢中で眺めた。



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