蒼夏の刹那
バスを降りた先にあったのは一軒のコンビニ。



「お、コンビニや。せっかくやし何か買ってこや」

「うん」

「おれがおごったるわ、初海記念に」

「ふふ。じゃあ、お言葉に甘えるね」



私はくすくす笑う。



蒼のおごりで、ソーダ味のアイスと蒼がいつも飲んでいる桜色のサイダーを買った。



蒼と手を繋ぎ、海の傍まで降りる。



「わあ……」

「綺麗やなあ……光できらきら輝いとる。ホンマ、人魚姫いそうや」

「うんうん」



私が嬉しそうに何度もこくこく頷く。



「ははっ。ほな、人魚姫探しに散歩するか?」

「うん……!」



不思議だね――



蒼と一緒だったら、どこまででも行けそうな気がする。



この手は魔法の手だ。



私を、変えてくれる手だ――



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