蒼夏の刹那
動かない時間
“藍花、ずーっと一緒にいよな”
朝も夜もわからない。
時間もわからない。
時計の針が、蒼と最悪の対面を果たしたあの日から止まってみえる。
鍵をかけた部屋の片隅でうずくまり何もする事なく、毎日がいたずらに過ぎていく。
蒼がいなくなってから、一晩中泣き続けて涙はもう出ない。虚ろな瞳に映る世界は色褪せ、虚ろな心は廃墟。
あんなに輝いてた自分の日常と言う名の世界は、いともかんたんに壊れ今じゃ、過去と言う名の記憶(オモイデ)に心が囚われてしまった。
当たり前が当たり前じゃなくなって、蒼のいない日常があたりまえ、になる。
“藍花、藍花みてみ!探してた本あったで”
記憶(オモイデ)の蒼はいつも笑っている。
「…………記憶(オモイデ)の中でもいいから、蒼に会いたい……蒼のいる世界がいいよぉ……だって、ここにはあなたがいない…………」
明日なんていらないから、蒼のいる時間へ戻してください。
仮面を被って生きる事も、幸せに生きる事もできない不器用な自分。
そう願い続ける事に何の意味もないと知りながら、また願う。