蒼夏の刹那
オレは再びベンチに腰を下ろし、藍花は隣に座った。



「ちょっと潰れちゃったけど……はい」

「鯛焼きとお茶……わざわざ買ってきてくれたの?」

「あの坂道じゃないなら、ここかなって。来る途中で、買っただけだから大丈夫だよ。あ……鯛焼き嫌いだった?」

「好き。蒼が初めておごってくれたのが鯛焼きで、坂道で食べ歩きした。……懐かしいな」

「……そっか」



まだ夏の香りがするこの公園で、オレは藍花と鯛焼きを食べた。



懐かしくて、哀しい。



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