蒼夏の刹那
教室の中心にいつもいた蒼。



転校初日から蒼の周りは、いつも人が絶えず男女関係なくいて、いつも楽しそうだった。



蒼は明るいうえに面白い。容姿も普通よりいいし、前に雑誌で見た読者モデルみたい。



人から嫌われる要素が一切ない、それに比べて自分は引っ込み思案で容姿も並みで人前に出るのが苦手。



だから、蒼と話ができる関係になれる日が来るなんて夢にも思わなかった。



蒼が初めて話しかけてくれた夕暮れの坂道の時以来、教室でもよく席にまで来るようになった。



「おはようさん。また本読んでるん?藍花は、ほんま本好きやなあ」

「おはよう。うん……本を読んでるとね、違う自分になれるから……」

「あ〜わかるわかる。おれもよう、マンガやラノベ読んで主人公気分になって家の手伝いすると、母さんからのブーイングすごいし」

「そうなんだ。蒼は家族からも人気あるんだね?ふふっ」

「バカで扱いやすい意味合いでは人気やけどな〜あ、今日図書室おれも一緒に寄ってええ?」

「うん。借りたい本があるの?」

「桜の写真集が今日から借りられるんや!買いたいんやけど、今金欠やから」

「桜の写真集……私も見てみたいな」

「あ、じゃあ今度おれん家来る?おれが撮った桜の写真あるし、藍花の好きな本もあるで」

「いきたいです……!」

「ほな決定」



蒼と初めての約束。



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