彼女

「でも…結婚…してるんですよね。」


オレは彼女の左手の薬指に目をやった。


彼女は右の親指と人差し指で指輪を上下させながら
「ああぁ…これね。一応ダンナさんいるよ。」

と少し寂しげに言った…
ように見えた。

さっきから…って言うか昨日から気になっていた。

彼女の時折見せる寂しげな表情が。




「あの…うまく言えないけど…あつこさん何か寂しそうに見える。
オレで良かったら話聞くし…。
生意気かな。
オレなんかに話しても何もならないかもしれないけど…。」



「ありがとう。」


彼女は微笑んで
それからうつむいた。










肩が少し震えている。








泣いてる。









オレは…


とっさに彼女を抱きしめていた。





何か言うべきだったんだろうけど



なぜか




抱きしめてしまっていた。



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