彼女
彼女は少し首を傾げて
「私に……?」
と驚いているようだった。
「あ、オレ走って帰れるからこれどうぞ。」
オレは傘を彼女に渡すと走り始めた。
「まって!!」
オレは立ち止まり振り返った。
「いいの?傘借りちゃって。」
「いっすよ。」
「ありがとう……でも、後どうやって返そう…あ、連絡先…携帯の番号教えてくれる?」
オレ達は携番を交換した。
何の迷いもなく…。
帰り道
オレはずぶ濡れになりながら彼女の事を考えていた。
なぜ泣いていたんだろう。
傘も差さずに。
家この近くなのか?
何歳くらいかなぁ。30代前半?
っていうか…名前…聞いてねぇじゃん。
オレは一人でちょっと笑って
それから駅まで走った。