彼女



静寂の中…
オレはぼんやり天井を眺めている。





「こんな事になってしまってごめんね…。」

遠い目をした彼女が言った。



「何言ってんだよ!オレが望んだ事だよ!!」
そう言いながらオレは彼女を抱き寄せた。




「だから…謝らないでくれよ…。」




彼女は少し驚いて…それからオレの胸で小さく頷いた。



「でも…私も結局ダンナと同じ事しちゃった。
負けちゃったよ。自分に…。」



オレはその事には触れず
彼女をギュッと抱きしめてから
首に腕を通した。




「やってみたかったんだ。この…腕まくら。」




「そうなの?」
彼女はいたずらっぽく笑うとオレの胸にしがみついて
それから
鼻と唇をオレの首筋にくっつけて…

「ありがとう。タンタン優しいね。」

と呟いた。



少しくすぐったかったけど
何だか幸せな気分になっていた。


< 27 / 65 >

この作品をシェア

pagetop