彼女



「いつまでもこうしていたいな。」


オレは彼女の肩を抱きながら呟いた。


彼女は微笑むだけだった。





突然、オレの携帯が鳴った。




ベッドから起き上がり携帯を手にする。



母さんからだった。

「何?」


「今どこにいるの?」


「どこって…何かあった?」



突然の問いにオレはそう答えるのが精一杯だった。

次の質問がくる前にウソの答えを考えているオレ。


「答えになってないでしょ!
どこに誰といるの!!!」



怒っているようにも慌てているようにも聞こえる。




「何なんだよ!
友達と本屋にいるよ!」



「友達って誰?!」




「母さんに言ってもわからないヤツだよ!
何怒ってんだよ!」


彼女が心配そうな表情でオレを見ている。

彼女の口が
‘か・え・ろ・う’と、動いている。



「これから帰るから、切るよ。」


母親の
「待ちなさい。」
を聞き終わらないうちにオレは携帯を切った。

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