彼女
「私ね…知ってしまってからは、必死だったんだよ。
ダンナさんを取り戻そうって。」
彼女は寂しげな表情だ。
「でも取り戻すまでも無くて…ダンナは…本気じゃなくてゲーム感覚だったって言ったの。
あなたのお母さんだってそう。
きちんとした家族がいたんだから…本気じゃなかったって事。」
オレは何て答えていいかわからずにいた。
彼女は話し続けた。
「許せなかった…。
自分達はいいだけ楽しんでおいてバレたら元の生活に何事も無かったかのように戻るなんて…許せなかったの。
私がどれだけ苦しんだか二人にはわからないって思った。」
彼女は目を潤ませている。
なのに今のオレは何も出来ずにいる。
「そんな時にあなた達家族を見かけたの……。
普通に幸せそうな家族だった。」
そうだったんだ…。
オレは心の中で呟いた。