彼女




「私…その時、壊してやる!って思ってしまったの。」



彼女の瞳から光るモノがこぼれ落ちた。




「あっこちゃん…ごめん…。」



思わず謝っているオレ。




「どうして謝るの?あなたも被害者なんだから謝らなくていいんだよ……それに私はあっこちゃんじゃないよ。」




「あ……そうだった……でも今更な感じだよ……。」



「でも
あなたのお母さんも…明子さんも、古くからの友人に‘アッコちゃん’って呼ばれてるの。
知ってる?
うちのダンナもアッコちゃんって呼んでたの…。」


「あ!!」

オレは愕然とした。


彼女が首を横に振る。


「謝るのは…私。
あなたのお母さんに復讐するつもりで…わざと息子のあなたに不倫相手になる私をあっこちゃんって呼ばせたんだから。ささやかな復讐…この事知ったら明子さんはどう思うだろうって私…思ってた。
‘あっこちゃん’って呼びながら、人妻に夢中になってる息子を見てどう思うだろう!!って思ってた。」


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