翼~開け放たれたドア~
「…春輝さんは……、いろんなものを抱えすぎている」

ポツリポツリと、龍也は話し始めた。

「俺が初めて春輝さんを見たときは息を呑んださ。雷に手を引かれてきた春輝さんを見て、最初は、小さい子だな、くらいにしか思わなかった。
だけど、パーカーのフードを雷がとって、春輝さんの顔を初めて見たときにさ、本当に身体中がゾクッとした。
なんだろうな……まさに“絶望”なんだよ。言い表すとしたら。
まだ16になったかならないかくらいの子供が、そんな表情をしていることに俺は驚いた。
何にも映さないんだよ。瞳に。
今はまだマシなほうだ。あの頃と比べれば…」

龍也はグッと言葉を詰まらせた。

いまにも泣き出しそうに顔を歪ませる。

「もういい。龍也。俺がこっからは話す」

「…悪い」

そう小さく呟いて、龍也は近くのソファーに座ると、手で顔を覆った。

泣くのを我慢してんだろうな。

龍也は、春輝のことになると本当に感情的になっちまうからな…。





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