翼~開け放たれたドア~
「うなされていた春輝がいきなり起き上がって叫んだんだ。あれは今でも覚えてる。
身体中が震えて動けなかったんだからな。
だから、春輝が急にベッドから抜け出して走り出して、それにハッとしたときにはもう遅かった…」

目を、思わずギュッと瞑った。

蘇る記憶。

赤に染まる白い髪。青白い肌。

「……春輝はそのまま、窓から飛び下りた」

鮮明に思い出せる。

押し寄せる後悔。自分の無力さ。

何も知らなかった自分を責めて、責めて。

二度と失いたくねぇって、強く思ったんだ。

「自殺しようとしたんだよ……。
うなされたあと、あいつは衝動的に死のうとするんだ」

そっと、目を開けて、奴らの顔を伺う。

「そ、んなことって……」

戸惑いを隠せないようで、困惑の表情を浮かべている。

そりゃそうだろうな。

いきなりこんなこと言われて、信じられるわけねぇし。

仮に信じられるとしても、驚くだろうな。
< 145 / 535 >

この作品をシェア

pagetop