翼~開け放たれたドア~
小さい頃からあの仕事をやっているんだ。

春輝は、仕事をやっているときだけ自分で行動できる。

命令の範囲内でしか行動できないけど、それでもあの頃の春輝にとってはかなりの“自由”に値するものだった。

いつもは動けもしない春輝が許される、籠のなかでの自由。

そして罪を償うために、その自由のなかで、その手を赤に染めた。

あの人の、命令通りに。

「じゃあ俺たち、ずっと勘違いしてた…ってこと……?」

本田飛鳥が呆然と呟いた。

「…そうだな。wingは、命令する人がいなくなった今でも、罪滅ぼしをしている。
まぁでも、あの頃とは違って、wingは必ずは潰さなくなった」

良いことなんだと俺は思う。

「あいつも……情が戻ってきたんだな…」

口にでてたことにハッとして王覇の奴らを見たが、なにやら話し込んでいるようで、こぼれた俺の声が聞かれてなかったことに安堵する。
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