翼~開け放たれたドア~
夢のなかで
──『春輝』
…誰?
『春輝…』
なんだろう、優しい声。
『おいで、春輝』
あぁ、懐かしいな。
……“懐かしい”?
私、この人のこと知らないはずなのに…。
『ほら、手を繋ぎましょう?』
右手に伝わる温もり。
いや、ちがう。私はこの手を知ってる。
だけど、白いもやがかかったように、ゆらゆらと揺れ動く記憶のなかに、私はこの温もりを思い出せない。
それはすごく、大切な人のはずなのに。
ゆっくりと2人で歩く。
だけど。
なぜか遠くから聞こえてくるような声や、近くにいるはずなのに、温かさを手に感じるのに、白く光っているようで見えない隣の人。
そのせいで、2人なはずなのに1人のような気がした。
『春輝、もうすぐよ』
「…どこにいくの?」
『そうねぇ…、ちょっとちがうわね。
“どこ”かに行くわけじゃないわ』
「?」
『あなたは思い出さなくちゃ。大切なものを』
柔らかい声が頭に響く。
「大切な、もの……?」
『そうよ。春輝は忘れているの。
確かに思い出したら悲しくなって、苦しくなって……、切なくなるかもしれないわ。
それでも…思い出さなくちゃ』
「…………」
『現に、私のこともわからない』
「…私は、あなたを知ってるの?」
『そうよ』
今まで感じた違和感が余計に強くなった。
…誰?
『春輝…』
なんだろう、優しい声。
『おいで、春輝』
あぁ、懐かしいな。
……“懐かしい”?
私、この人のこと知らないはずなのに…。
『ほら、手を繋ぎましょう?』
右手に伝わる温もり。
いや、ちがう。私はこの手を知ってる。
だけど、白いもやがかかったように、ゆらゆらと揺れ動く記憶のなかに、私はこの温もりを思い出せない。
それはすごく、大切な人のはずなのに。
ゆっくりと2人で歩く。
だけど。
なぜか遠くから聞こえてくるような声や、近くにいるはずなのに、温かさを手に感じるのに、白く光っているようで見えない隣の人。
そのせいで、2人なはずなのに1人のような気がした。
『春輝、もうすぐよ』
「…どこにいくの?」
『そうねぇ…、ちょっとちがうわね。
“どこ”かに行くわけじゃないわ』
「?」
『あなたは思い出さなくちゃ。大切なものを』
柔らかい声が頭に響く。
「大切な、もの……?」
『そうよ。春輝は忘れているの。
確かに思い出したら悲しくなって、苦しくなって……、切なくなるかもしれないわ。
それでも…思い出さなくちゃ』
「…………」
『現に、私のこともわからない』
「…私は、あなたを知ってるの?」
『そうよ』
今まで感じた違和感が余計に強くなった。