翼~開け放たれたドア~
『側にいてあげられなくて。
そのせいで、忘れさせてしまって。
でも、いつか会える日が来るわ』

「側に…?あなたは私の何を知ってる?」

『…ごめんなさい。教えられないの。
それは自分で思い出さなくちゃならないから』

思い出さなくちゃならない?

私は…何を忘れているの?

『春輝。お願い…。もう無くさないで。
春輝自身が気づいてあげて』

フワリと翼が揺れたかと思うと、私の横に一陣の風が吹き抜けた。




『──春輝ならきっと気づけるわ。
だって、あなたは、私の──…』

ビュウッと空気が切り裂かれ、最後の言葉は聞こえなかった。

「──待って!!」

私の声を背中で受け止め、天使はドアの向こうへと消えていった。


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