翼~開け放たれたドア~
茫然と立ったまま、ドアを見つめていると。

ゆらゆら。ゆらゆら。

視界が揺れる。

「な、に…?」

私が揺れているかと思ったけど違った。

“ガランガラン”という音をたてることもなく、静かに籠の鉄の棒が崩れていく。

いつの間にか真っ暗な周りを巻き込んで闇へと落ちていく。

怖い。怖い。

何が起こっているの?

ギュッと目を強く瞑ったとき。



──“春輝”

なぜか頭に響いてきたのは、予想外の人の、強く、優しい声だった。

脳裏に浮かんできたのは

──真っ黒な髪の無表情な男だった。



「空夜……っ」

無意識にでた声。




そして、その後に浮かんできたのは

『春輝』

真っ白な翼と純白の髪をもつ天使だった。
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