翼~開け放たれたドア~
こいつをどう思っている?

こいつは俺にとってどんな存在だ?

春輝と話すと頬が緩む。

抱きしめれば離したくなくなる。

泣きそうな顔されれば胸が締めつけられる。

誰かに抱きしめられれば息さえもできないほどに苦しくなって…。





あぁ、そうか…。

俺は、こいつが好きなのか──。

こんな簡単なのにな。

今までなんで気づけなかったんだろうな?

俺は腕の力を強める。

「空夜…?」

長い前髪から覗く、大きな黒い瞳。

「…なんでもねぇよ」

そう言葉では言うのに行動は裏腹で、より強く抱きしめる。

好きだって自覚したとたん、不安にかられた。

どこかに行っちまいそうだから。こいつが。

腕の中に閉じ込めてしまえれば。

そう、強く強く願ってしまうほどに。

儚く美しい、揺れる小さな──好きな女。

胸を支配するこの熱いもんの意味がようやくわかった。

これが、──“愛しい”。

~空夜 side end~
< 180 / 535 >

この作品をシェア

pagetop