翼~開け放たれたドア~
見上げると、なんだか飛鳥の顔は真っ青で。

「あーと、でないと地獄みちゃうことになるから…さ。ほら」

飛鳥はスッと自分の目の前を指差す。

不思議に思って寒いのを我慢して振り返ると、

……大魔王さまがいた。

「ね?あれに殺られちゃうから。だから離れてください。でないと俺死んじゃう」

飛鳥がいう“あれ”とは…

「…早く離れろ」

不機嫌オーラ全開の大魔王…空夜のこと。

私は渋々離れるが、寒くて「うー…」と唸った。

「…春輝」

空夜の声とともに、視線が高くなる。

……抱き上げられた。

空夜が大きいから、風がほとんど来なくなる。

私はそれでもなんとなく寒く感じて、空夜にギュッと抱きついた。

「空夜も温かいね」

「当たり前だ、バカ」

ふっと笑う空夜は、言葉は罵っているようだけど、全然優しい声を出す。

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