翼~開け放たれたドア~
「「「こんちわっす!!!」」」

歩くたびにかけられる挨拶。

それに笑って応える奴。

「総長!この方はwingですよね!?」

「あぁ。俺らの恩人だ」

なんかこんなこと話してるみたいだけどさ。

私、そんなこと言われるような人じゃない。

だけど、そんな私に下っ端の1人が近づいてきた。

「あの!あのときはありがとうございました!!!」

下っ端は笑顔でお礼を言う。

私に殺られたくせに、なんでお礼をいうんだろう?

私はあんたを傷つけたのに。

それに……

「いや、俺はなんもしてねぇ。
変われたのはお前らの意志があったからだろ?
それに…」

俺は手を伸ばし、話しかけてきた奴の頭を撫でた。

「これからが本番だ。……負けんなよ?」

私みたいに。

何もかもを諦める必要はないから。

だから、頑張れ。

「──はいっ!!」

元気よく返事した男。

そいつの頭をポンポンと叩いてから、また私は歩き出した。
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